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12話 記憶の鍵はそこにある

ผู้เขียน: 日蔭スミレ
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-07 14:30:31
 ──霞のかかった白の視界は次第に色が付き始めた。黄昏を連想させる金と茜が交じり合う……そんな光が空間いっぱいに満ちていた。

 記憶に無いが、そこはどこか見覚えのある景色で……。唖然としたキルシュは辺りをぐるりと見渡した。

 なだらかな曲線を描いて広がる木目調の高い天井に、高い場所にある窓には蔓草を象ったアイアンの窓飾り。どこかの礼拝堂だろうか。

『なぁキルシュ!』

 途端に呼ばれた少年の声にキルシュが、振り向くと壇上のステンドグラスの前に少年と少女が立っていた。年齢は十歳に満たない程で……。

 その光景を見た瞬間にキルシュの側頭部はズキリと痛んだ。

 そこに立っている少女は、紛れもなく幼い頃の自分自身。茜色の髪に、若苗色の瞳。そんな小さな自分の正面で手を差し出している少年は、真夏の陽光を束ねたかのような金髪だった。

 しかし不思議と彼の顔ははっきりと見えなかった。

 それでも大きな特徴が見えた、左手の甲にある火輪──まさに太陽を象ったかのような能有りの紋様がある。それをはっきりと見た瞬間にキルシュの胸は痛い程に爆ぜた。喉の奥が嫌に乾いて苦しい。

(何なの、これは……私は確か真夜中の森に居たはずで)

 どくどくと自分の脈が煩くなって、呼吸が苦しい。

 身体が心が〝これ以上は見るな〟と拒絶している感覚もあるが、壇上の二人から目が逸らせない。

 幼きキルシュは差し出された彼の手を取り、やんわりと微笑んでいた。

 ……自然に普通に笑えている。今ではできない事に、キルシュは唖然としてしまった。

『おれね、キルシュが大好きなんだ。大人になっても最高の親友でいよう。それでな、いつか……いつかは……』

 顔の見えない少年は言葉を詰まらせる。そんな様子に幼いキルシュは首を傾げて彼を見上げていた。

『なぁに?』

『──っ! いつか、おれの事を本当に好きになってくれたら、お嫁さんになってほしい!』

 そう叫んだ彼に、幼いキルシュは繋いでいた手をぱっと外して彼に飛びこんだ。

『もちろんなの。ずっと傍にいて! だいすきよ、ケルン』

 ケルン。

 記憶にも無い名前だった。その名を聞いた途端、ぼやけて顔が見えなかった彼が次第に鮮明になる。ぱっちりとした、つり目。その双眸を彩るのは青空やネモフィラの花を思わせるよう……青い瞳で。

 照れたように、はにかむ彼。微笑む幼い自
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